『KCIA 南山の部長たち』(映画)【レビュー】

感じたこと

・「あの頃は良かった」「あの頃は良かったです」の思い出語りがすごく切ない

・韓国の近代史に対して興味がわいた

実際に1979年に勃発した朴正煕暗殺事件を基に作られた作品。映画冒頭にフィクション作品であるとの断りが入るのだが、その理由は朴大統領を射殺した金載圭が、1980年には極刑に処せられており、この事件にかかわる多くの疑問が、現在でも真相不明となっているためである。その謎となっている部分へ、新しく解釈を与え再構築したものが本作であり、そういう意味でフィクションという体裁をとっているのだと思う。

宣伝用のポスターに大きく書いてあるのだが「男はその日なぜ大統領を暗殺したのか。」という結末にのみ向かって、物語は無駄なく、しかし大胆に進行していく。腐敗した政治、権力闘争の最果て、旧友への裏切り、男同士の嫉妬にも似た嫌がらせ…これらすべてが、暗殺という結末に係る要因にみえるよう、丁寧に描かれていく。

クライマックス、イ・ビョンホン演じる、キム部長の進退がいよいよ窮まった際、こんなセリフが吐き捨てられる。

「もしも(革命を達成する瞬間に渡った)あの橋を(私たちは)渡らなかったら・・・」

劇中には語られなかった、この言葉の続きは一体何だろうか。「私はあなたを殺さずにすんだのだ」なのか、あるいは「殺されるのは、あなたではなかった」なのか。

暗殺される側であった、パク大統領も心の奥底では、18年間もの間に独裁者となってしまった自分自身に対し嫌悪感を抱いているように感じられた。少なくとも今の状態が、本人の望むものとはかけ離れているようには見えた。だからこそ、映画の冒頭でパク大統領とキム部長は二人で酒を酌み交わしながら、革命に燃えていた「あの頃は良かった」と日本語でお互いに言い合ったのだろう。後になり思い返してみると、このシーンといい、このセリフといい実に切ない回想の場面だったし、劇中、唯一と言ってもいいほど、パク大統領とキム部長の本心での会話の場面だったんだなあと感じた。

これまでの歴史が証明しているように、独裁者となった者は次第に疑心暗鬼に陥り、最終的には誰も信用できなくなってしまう。思うに独裁者という人たちは、権力を握っているという側面もあるが、一方で自身の生活(時には生命をも)を維持するために、いかなる時も権力を保持し続けなければ生きていけない人たちなのではないだろうか、そこまでいってしまうと、かならず失脚する。こんな歴史がこれまで幾度となく繰り返され、そしてこれからも幾度となく繰り返していくのかと思うと、気が重い、どこかで人類に智慧がつかないものか・・・。

さて、まとめですが、総合的には、各登場人物の心の機微がよく描かれている、とてもよい映画でした。また30代の私は、恥ずかしながらこの事件のことを詳しくは知らなかったのですが、映画を通じて韓国の近代史にも興味がわきました。

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